個人事業者の消費税増税への対応準備は、実は今年の12月31日?

来年10月1日より、消費税が10%に引き上げられ、平成35年10月から「インボイス方式」が導入されます。

まず、抑えておく必要がある「インボイス方式とはなんぞや?」ということですが、、、

「顧客から消費税を取っていいのは、税務署に消費税を納める事業者(課税事業者)のみ。」

という制度です。(正式には「仕入税額控除には適格請求書等の保存が必要」ということなので、不利益をこうむるのは顧客側であって、売る側ではないですが、、、顧客確保の観点から考えると売る側のほうがダメージが大きい感じがします。)

 

今までは、原則「売上1,000万円以下の事業者(免税事業者)」については、「顧客から『消費税』の名目で貰った金額を売上の一部にする。」ことが出来ていました。

つまり

「商品の値段は100円で8円が消費税」の振りをして「108円の商品」を売ることが出来てたわけです。

 

これを完膚なきまでに叩き潰すのが「インボイス方式」です。

「インボイス方式」が導入されると、課税事業者以外は「うちは消費税を預かっています。」ということが出来なくなるため、かなりの確率で「消費税を取ってないのだから、その分値段を下げろ。」といわれることになります。(顧客にしてみれば、消費税を払ってるつもりが払ってないことにされるため当然の主張といえるわけですが、、、)

 

普通であれば「値段を下げろ。」という要請は、「消費税の転嫁拒否」として禁止されているわけですが、「インボイス方式」が導入後の「免税事業者」については禁止の対象になりません。(真っ当な主張になるため。)

そのため、、、「よその課税事業者さんが108円なんだから、免税事業者のお宅は100円でお願い。」と言われることになります。

言われる可能性が高い事業者(あくまでも私の推測であり、実際どうなるかについては分かりません。)としては、、、

1:士業(小さい事務所などは売上1,000万行っていないところも多いので)

2:外注請負(もともと従業員だった人間の雇用契約を変えた形の場合など)

3:ヤフオク、メルカリ等の中古品売買(小遣い稼ぎをしてるパターンなど)

4:小規模なテナント貸付(個人で不動産貸付をしている人など)

などが上げられます。

 

この値下げ要請に対抗する(真っ当な方法での)唯一の手段は「うちは売上1,000万以下だけど、課税事業者です。」となることです。なお、消費税には簡易課税制度というものがあり、売上1,000万円以下であれば基本的に適用を受けることが出来るため、、、

免税事業者の場合「顧客に100円に値切られる。」

課税事業者の場合「顧客から108円を貰い、4円(簡易5種:サービス業)を消費税として納める。」

という形で、課税事業者を選択することで、手取りベースで4円の差が出てくることになります。

 

ここで問題となるのは「顧客から値下げ要求が来るのはいつからか?」という話です。

あくまでも私個人の意見ですが、、、「来年10月1日からの消費増税のタイミングで値下げ」の可能性が高いと考えています。(顧客にとっては、4年間、値下げと満額仕入控除の両取りが出来るので逃すとは思えません。逃してもらえればラッキーな感じです。)

「インボイス方式」の導入自体は平成35年10月1日からなので「仕入控除が出来るのだから、その分払ってください。」と主張することも出来ますが、「実際に消費税を納めてもいないのに、消費税をとるのはおかしいのでは?」と顧客に言われて対抗するのは、力関係的に難しいと思われます。(今までは控除できていたのでスルーしてたけど4年後には控除が段階的に出来なくなるからスルーはもうできない、といったところでしょうか。)

 

そうなると、免税事業者は「課税事業者になって、簡易課税の適用を受けて、抵抗する。」形になるわけですが、そのために必要になるのが「消費税課税事業者選択届出書」と「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出になります。(士業や外注請負などは原価率が低いので簡易有利がほとんどになります。)

この2つの届出書を出すことで「課税事業者として消費税を納める必要があるので、消費税をとります。」と正当に主張することが可能になります。(まあ、「私は課税事業者です。」という振りをして4年間乗り切るというのも有りといえば有りですが、、、平成35年に詰みます。)

 

ここで問題となるのが「届出書の提出期限」です。

基本的にこの「届出書の提出期限」は「適用を受ける課税期間の初日の前日」です。

一般的に、法人であれば「前の期の決算日」、個人であれば「前年の12月31日」です。

つまり、個人事業者の場合、来年の消費税増税のタイミング(平成31年10月1日)で顧客から出される要求に対応するには、平成30年12月31日(今年の年末)までに2つの届出書を出しておく必要があるわけです。

 

当然、顧客から値下げ要求が出されなければ、まったく問題はありませんが、それはあくまでも平成35年10月1日まで問題が先送りされただけでしかありません。(不利益を全部顧客側でかぶってもらえるのであれば、インボイス方式導入後も一切問題はないですが、、、)

また、影響は10月1日以降の3ヶ月分になるため、「相手の出方をみる。」のも一つの方策かもしれませんが、「指摘された後に意図的に課税事業者になって消費税を貰う。」というのはイメージ的に良くないと思われます。

「消費増税まであと1年」の、このタイミングで消費税に正面から向き合ったり、税理士等に相談してみてはいかがでしょうか。

 

追記:

本文とは全然関係が有りませんが、消費税率が10%になると、簡易課税のサービス業(みなし仕入率50%)で「1ヶ月の売上×10%×50%×12ヶ月」が概算納税額となり、「1ヶ月の売上高の6割」の消費税を納める必要が出てきます。資金繰りに直撃する可能性が高くなるため計画的に貯めておくことが重要です。

なお、簡易課税を取らない場合には、ざっくばらんに「(1ヶ月の平均利益+1ヶ月の平均給与等)×1.2」が消費税額となるため、毎月「利益と給与等の1割」を別段預金しておくといいかもしれません。