今日のNHKのニュース7で、「税調で所得税の控除見直し」とのニュースがやっていました。先日の投稿で社員と請負、給与所得控除と経費については色々書いたので、普段は余り真面目に見ないニュースも興味を持って観ることが出来ました。
「給与所得控除の引き下げ」と「基礎控除の引き上げ」がニュースでクローズアップされていましたが、以前の理屈として、、、
「給与所得者は収入の状況の把握が容易。(全ての収入が適正に課税されている。)」
「個人事業者は収入の状況の把握が困難。(つまり、隠し収入がある可能性がある。)」
という前提があります。(今でこそネットやパソコンがありますが、この制度ができた頃は、ソロバンと紙の帳簿だったわけで、、、ほんの20年前でも最新のパソコンの性能は、、、ウィンドウズ98の必要スペックとかを検索すれば想像が付くかと思います。)
しかし、ネットやパソコンの普及、マイナンバー制度の導入により個人事業者も全ての収入に適正に課税される環境が整いつつあります。またネットの普及は給与所得者に手軽に副収入を得る手段を提供しており、個人事業者との差異が縮小しつつあるのも事実です。
今回の所得控除の見直しは、そのような時代の変化に税制が対応するための見直しと言うことになります。
さて、まだ決まってもない制度について語るのもなんですが、「給与所得控除の引き下げ」と「基礎控除の引き上げ」という流れ自体は多分変わりがないと思うので、有効活用する手段について考えてみたいと思います。
「予備知識:給与所得控除と基礎控除の注意すべき点」
1.「給与所得控除は合計所得金額からは引かれる」が「基礎控除は合計所得金額から引かれない」
※以下の内容の詳しい説明については専門家のサイトを参照してください※
「給与所得控除」というのは「控除」と付いていますが、実際は「概算経費(まあこれぐらいかな?と見積もった経費)」です。
「事業収入-経費=事業所得」「給与収入-給与所得控除=給与所得」となり、様々な所得を合計して構成されるのが「合計所得金額」です。
<「控除」という言葉が使われる理由>
「収入-経費<0」がありえるのに対して(これは税法用語で「減算する。」)
「収入-概算経費≧0」に必ずならないといけない(これは税法用語で「控除する。」)
その意味で「控除」という言葉が使われています。
一方で、「基礎控除」は「総所得金額」を計算した後に、その金額から38万円を控除することを差します。
何が問題かというと、「給与所得控除は健康保険税や国民年金の減免措置等に影響するが、基礎控除は影響しない。」ということです。つまり、国民健康保険に加入している場合には、給与所得者の健康保険税はUPします。また、国民年金の減免措置についても場合によっては基準に引っかかり受ける事が出来なくなる可能性があります。
2.「基礎控除」は、所得税と住民税で異なる。
現行の所得税の基礎控除は38万円であるのに対して、住民税の基礎控除は33万円です。仮に所得税側で増額されたとしても住民税側で増額されなければ、効果は限定的です。
そもそも、地方への財源委譲の関係で低所得層は「所得税:住民税=1:2」になっています。(なので住宅借入金控除を住民税からの控除が可能になるように制度が作られているわけです。)給与所得控除についても住民税独自の計算式があるため、仮に所得税側で調整が行われても、住民税の調整が行われない限り効果は3分の1になります。
「給与所得控除の引き下げを有効活用する方法」
実はこの「給与所得控除」、あくまでも「経費」であるため抜け道があります。それは何かというと、「実際にかかった経費が概算経費を上回っている場合、実際の経費を控除することができる。」というものです。普通は「給与所得控除の計算表で計算した金額(概算経費)」のほうが高いため、適用を受ける人は非常に少ない(各税務署で数名程度)ですが、給与収入のために新幹線や飛行機移動を使っている人(単身赴任等)、スーツや参考資料を大量に買っている人、給与収入のための資格等の取得に要した費用が高額な人については、「実際にかかった経費」で給与所得控除を受けることが出来ます。(高額な通勤費については給与課税されるため、そのフォローともいえます。)
つまり「給与所得控除の引き下げ」により、実際にかかっている経費を下回った場合には、「実際の経費」で給与所得控除を受ければいいだけなので、個人事業者に比べて著しく不利になるようなことはありません。今のうちに「自分が給与所得を得るためにどれぐらい支払っているか。」を把握しておくと良いでしょう。
「基礎控除の引き上げを有効活用する方法」
基礎控除は、「控除」と名前が付いているとおり「0円になるまでしか引けない。」ものです。よって、もしも様々な所得控除を引いた後、基礎控除分を引ききれない場合には、「もったいない」ことになります。「厚生年金・協会健保等に加入」している場合には年金等の計算で合計所得金額は考慮されないため、特定口座で源泉徴収されている税金の還付を受けたり、配当控除を受けたりするのも良いかもしれません。
あと、個人事業主にとっては健康保険等の要素を度外視すれば、非常に有利になるため、この機会に脱サラしてみるのも悪くはないかもしれません。(昔のように終身雇用で安心といった時代でもないので)
正直、上記の内容が「有効活用」かどうか微妙なところですが、制度変更はピンチでもあり、チャンスでもあります。e-taxや国税庁の「申告書作成コーナー」など(マイナンバーカードを電子証明書として利用することが出来ます。)個人が手軽に確定申告を行うための環境は整備されてきているので、この機会に「年末調整」だけで済ませずに、「確定申告」をしてみるのも良いのではないでしょうか。