年末調整に必要な資料がボチボチ届き始める時期となりましたが、やはり年末調整の提出資料の代表は「生命保険料控除証明書」でしょう。
この控除証明書には、その保険が「一般」「介護医療」「年金」の区分ごとの支払い金額が記載されていますが、最近は特約が付されている保険や複合的な保険も多いため、思ったより控除を受けれないといったパターンも良く見られます。(「医療保険」と謳われながら支払額は「一般」がほとんどだったり、「年金保険」と名前が付いているのに「一般」の保険だったりして、全体の限度額12万円ではなく、「一般」の限度額4万円に縛られるパターンが多いです。)
さて、今回は年末調整をする人が最近多く加入するようになった「所得保障保険」について考えてみたいと思います。
まず、この保険の性質ですが「重度の障害等で働けなくなった場合、月額で一定額の年金を支給することで生活を保障する。」保険です。サラリーマンの人にとっては「働けなくなっても給与の保障がある。」形になるため、魅力を感じる人は多いのではないでしょうか。(しかも、年末調整で生命保険料控除を受けることができるのも魅力かもしれません。)
ただ、最低保障的な部分は各種の「障害年金」や生活保護が存在するため、「必要性はありません。」
そのため、この保険は基本的に「一般の生命保険(死亡保険)」とほぼ同じと考えて差し支えありません。(死亡保険も高度障害による給付があるため。)
では、保険金と保険料はどうでしょうか?
ある保険会社で「35歳加入、保険期間は30年(65歳まで)、月10万円の保険金」と設定した場合(最近はネットで手軽にシュミレーションが出来るので、一度試してみてもいいかもしれません。)
保険料:月額2,077円
となります。
まあ、180日の待機期間がありますが、加入後すぐに保険金給付事由に該当した場合
保険金総額:月10万×12ヶ月×30年=3,600万
となります。しかしこれは「額面」の合計額に過ぎません。保険会社は30年に渡り運用をすることができるため、その分を考慮する必要があります。
この際に使われるのが「年金現価係数」です。仮に年間の運用利回りを3%とした場合、月10万円(年120万円)を30年間支給するために支給開始時に必要な金額は、次のようになります。
120万円×19.600=2,352万円
つまり、他の死亡保険や保有している資産で2,352万円を用意できれば、この保険は不要ということに他なりません。また、この保険は「65歳まで」と支給打ち切りの年齢が定まっている掛け捨て保険なので、その価値は毎月10万円ずつ下がっていきます。
一方で負担する保険料は年間「2,077円×12ヶ月=24,924円」となり、83万円を年利3%で運用したのと同じ金額となります。これを安いとみるか高いとみるかは、判断が分かれるところですが、他に死亡保険等で既に補償をつけているのであれば、障害年金や生活保護の要素を加味すると、余りメリットはありません。
また、死亡保険は加入年齢が低いほど保険料が安くなります(35歳だと55歳の5分の1程度の保険料)が、所得保障保険はそれほど変わりません(35歳でも55歳の7割程度)。
これらを総合して考えた場合、「所得保障保険に入る余力があるなら、死亡保険の内容を充実させたほうがいい。」というのが結論になるのではないでしょうか。
※ 上記の考えは死亡保険に高度障害による給付があることを前提に話しています。保険の種類によっては該当しないこともあるので、注意してください。
※ 180日間の支給対象外となる期間を考えると、その期間を越える就業不能で「社会保障制度の対象とならない。」状況や「高度障害でない。」という状況は「非常に特異なパターン」と考えられます。(保険会社が具体事例とかを書いていますが、あれは売る側のPRなので現実味に乏しいと思われます。)
※ 保険の加入については最終的には自己責任です。保険会社は「保険料を出来るだけたくさん集めて、支払う保険金を極力少なくする。」ことで利益を出していることは、常に留意しておきましょう。