マイナンバーの導入で株主優待はデメリットのほうが多くなる?

まだ、時期的には早いですが、月末になると証券会社から「今月末の株主優待リスト」の案内が届きます。最近は某有名人による「株主優待タダ取りスキーム」もスッカリ有名になり、優待狙いで株を買う人は多いのではないでしょうか。

この「株主優待」、企業側では株主に対して支給する際に「損金経理」ができるため、配当に比べて「30.86%(実効税率)」安く同水準の給付を行うことができます。

一方で受け取った個人においては「雑所得」となり、年末調整をしたサラリーマンであれば20万円までは申告不用とすることができます。(ちなみに、医療費控除などを目的に確定申告をする場合には20万以下でも申告をする必要があります。税法上、申告をしなければ申告漏れ・脱税です。)

※ 住民税には20万円の申告不要規定はないため、年末調整をしたサラリーマンであっても雑所得については申告書を提出する必要があります。(当然住民税も増えます。)

先日の投稿でも書きましたが、雑所得は「評価額」が定めにくいなどの理由で、今まで把握が困難でした。よって、「申告しないもの勝ち」だったわけです。

しかし、マイナンバー制度の導入で状況は変わりつつあります。

証券会社で口座を開設するには「マイナンバーの提示」が必須となっています。つまり、マイナンバーのもと、株式の売却益や配当、そして株主優待までその収入状況を把握することは容易になりつつあります。そして、税法上「雑所得には所得税が課税される。」ことになっているため、見つかれば必ず税金を納める必要が出てきます。

この「雑所得」の問題点は、所得税だけに止まりません。住民税や健康保険、場合によっては年金の減免措置などに直撃する場合があります。(配当控除を受けたくて確定申告をしたら健康保険の金額が増えるパターンと同じです。)

「見つからなければいい」訳ですが、「見つかりやすそうな状況」になりつつあるなかで、株主優待には一つとてつもない爆弾が潜んでいます。

それは「株主優待の価値」です。

株主優待を賞賛するサイトなんかをみていると、「所得税を課税されることなく。」商品券や食べ物などを貰って生活の足しにするパターンが多く紹介されています。

しかし、マイナンバー制度の導入により「所得税を課税される」ようになれば、ある問題が出てきます。

それは、、、

「株主優待の価値は、最低でも企業側での損金経理額と一緒になる。」ということです。

一般的に「役員が会社から無償で資産の譲渡を受けた場合」には、「その資産の時価に相当する給与が支給されたもの」と考えます。現状、株主優待は広告宣伝費等として損金経理されているため、当然その損金経理額が「株主の所得」となります。

この損金経理額には「株主優待を準備するための人件費」「株主優待の送付費用」「株主優待の包装費用」などが含まれます。そして、その金額がそのまま人数割りされて「株主の所得」となるわけです。

簡単に想像が付くとは思いますが、貰った物は「商品券1,000円」であっても、雑所得になるのは「商品券1,000円+郵送料200円+包装代100円+作業代100円=1,400円」のようになります。

特に自社製品の場合は危険です。「時価=市場での販売価格」となるため、値引きも何もない状態で商品を買うのとほぼ同じになってしまいます。(まあ、同額の所得が発生してるわけで、収入増を喜ぶべきかもしれませんが、、、)

最悪なのはオリジナル商品かもしれません。企業側が節税のために「普通より高い値段で関連会社から賞品を調達」することも可能だからです。(某代議士ネタではないですが「特別な水1本15,000円」とかも理屈上は可能です。その水で消せないような炎上が起きそうなので、無いとは思いますが、、、)

また、オリジナル商品にプレミアが付く場合、「そのプレミア部分」も雑所得になります。(限定品としてヤフオクとかで高値で取引されたりすると、そちらが「時価」になります。)

当たり前の話ですが1,400円で1,000円の商品券を買ったり、値引き無しの小売価格で食べ物を買ったりする人は、普通はいません。株主優待の商品リストをみても「タダで貰えるからお得に感じられる。」事はあっても「この商品が1,000円というのは安い。」と感じることは(あえて言いましょう)絶対ありません。

そう考えた時、株主優待のお得な理由は「脱税(租税回避)できるからお得」なだけで、決して正しい意味でお得なわけではありません。パナマ文書やパラダイス文書、女王陛下でさえ租税回避が吊るし上げを食らう時代です。そんな時代に一般人である私たちが租税回避を出来るとは考えるのは、正直頭がパラダイスなのではないでしょうか。

現状、株主優待はトレンドであり、配当と共にインカムゲインの双璧となっています。だからこそ租税回避の視点のみならず、本当にその優待が自分にとって「××円相当」以上の価値があるのかについて考えるのが重要です。

追記:

特定口座(源泉徴収あり)での上場株式の売却益や配当は20.315%の税金を取られますが、課税関係はそこで完結します。そのため、配当控除や損益通算などを行わなければ、いくら稼いでも住民税や健康保険や年金の減免に影響を与えません。(累進税率が増えることもありません。)

今後のことを考えると優待重視より配当重視の株式のほうが実はいいかもしれません。(タダ取りみたいな裏技はないですが、、、)